名古屋東山動植物園の飼育員、レゲエのお兄さんとして大人気

posted: 2018-09-01 modified: 2018-12-14


Mr.Tomoharu Watanabe 渡邊友治さん

 「高校時代、ボブ・マーリーの音楽に出会って、メッセ―ジに共感を覚え、彼を育んだジャマイカという国を見たいと思った」のがジャマイカに興味をもった入り口だった。だが、最初の出会いは「怒り」しかなかった。20数年前のこと、ボブの聖地ナイン・マイルに行く途中、田舎道で子供たちが「片足のない犬を棒で虐待していた」様子を見たからだった。
 幼い頃から、森に囲まれた環境に住み、動物たちと一緒に育った渡邊さんは、小学生の頃から「動物園の飼育員になる」と決めていた。
 お父さんにキャッチ・ボールの相手をしてもらった記憶はなく、鮮明に記憶に残っているのは、動物園に連れて行ってもらった事なのだそうだ。その頃の飼育員への道は、農業高校の畜産科に学ぶ事だった。3年間を寮生活で過ごし、勉強嫌い、スポーツダメで諸先輩から“各種のしごき”にもあったが、人と関わる事が大好きで、その環境さえも楽しむことを覚えた。次に進んだのは国際ナチュラリストという専門学校だった。そこでの、渡邊さんは、良き仲間たちに恵まれたのだった。
 飼育員になって、25年。最初に育てたのはボンゴ(羚羊類、牛に近い動物)、トラ、ヒョウ、インドサイ、アジアゾウで現在のキリンは6年になる。その間、インドサイをオーストラリアへ輸送。アジアゾウをスリランカに見に行ったこともあった。それは、東山動物園に来るゾウたちの生活環境や実際にゾウ使いとどう暮らしているのかを学ぶためだった。どの動物が好きとか育てやすいという事ではなく「関わったら、その子が好きになる」のだそうだ。キリン舎の前で、筆者が話を聞いていると彼の子どもたち(トリノくんとマオちゃん)が長い首をのばしてきたのである。なんとも愛くるしい黒い目でじっとこちらを見て「何してるの?」と言っているかのようで、筆者もいっぺんで「この子たちの虜」になってしまった。「ボクがリラックスして話しをしているので、敵と話をしているんではないと感じたのです」と渡邊さん。動物は、未知なるものへの不安が大きい。「だから、動物図鑑をてらしあわせる見方でなく、暮らしや表情を見て欲しい。お客様が笑ったりするとそれが、キリンにも伝わって筋肉が緩みリラックスするのです」。
動物は亡くなる時、人がいない場所や時間を選んだりするのが多いのだそうだ。トリノくんの親であるオグラさんが亡くなった時の事。キリン舎の事務所に近づいてきて、それはまるで別れを惜しむような感じだったそうだ。渡邊さんをはじめ、飼育員の励ましの声を聴きながら、息をひきとったという。悲しかったというより「生き物はいずれ死ぬ。ボクと関わって、リラックスできる行動が増えたか。快適に過ごしてくれたか。彼がどう生きたかが問題なのです」
渡邊さんは、今、実家の近くに自分で犬舎を建て犬たちと暮らしている。サーロスウルフドッグ(狼の血がまじっている犬)で、10年前は日本にださないとされていたオランダ人が作った品種。スウエーデン、フィンランド、フランスなど各国のブリーダーたちと連絡をとり、2014年、 フランスから生後10ヶ月のアイツくん(パトワ語で崇高な精神の意)を連れてきた。昨年11月には、ダナちゃんも連れてきた。「いづれは、子を生ませたいけれど、気ながに観察して距離を縮めながら、見まもるしかない」。犬とはちがった独特な感性をもつサーロスウルフドッグに魅せられている。
 動物園を訪れて来るお客さんの人気はイケメンゴリラ、シャバー二くんとキリンのお兄さん、渡邊さんが2分していると言われている。気になる、ドレッドヘアのわけは?「オーチョ・リオスで、出会ったラスタマンのお土産屋さんが、1日中、話をしてくれて、言葉があまり通じなくても自然にありのままに生きている彼に憧れさえ抱いた。そんな気持ちもあって、伸ばしていた髪の毛をどんどん伸ばして、ドレッドヘアにしてしまった」
 渡邊さんの動物と人間がリラックスした関係でありたいという飼育の見せ方は、彼が始めたキリン舎の前でのアニマルトークにしっかり反映している。

東山動植物園

場所:〒464-0804 名古屋市千種区東山元町3-70
URL:www.higashiyama.city.nagoya.jp