ラスタファーライとレゲエの関係への興味からジャマイカ研究へ


上段左端、久留米大学文学部・国際文化学科 神本先生

 ――自分が作った曲をパトワで歌い、レコーディングしたい

「子供のころから、音楽が好きでしたね。歌謡曲、パンク、ロックなんでも聴いてました。大学3年でボブ・マ―リーに出会いました。最初は純粋に音として、楽しんでいたのですが、段々、それらの曲で歌われる植民地や奴隷制という過去を批判するメッセージや宗教的な奥深さに惹かれた」という神本先生。

京都大学大学院人間・環境学科研究科を修了し現在は久留米大学の文学部国際文学科の准教授である。著書や論文を多数持ち、研究者という肩書を聞くと硬いイメージがつきまといがち。で、お話を聞くには、多少の勇気が必要だった。ところが、優しい笑顔、温和、おしゃれ。どんな質問にも丁寧に答えてくださったのでした。

先生は学部生のときにはドレッドヘアーにしたこともあったとか。子どもの頃から「常識とか、非常識だという基準って何なのだろうか」といつも思っていたそうだ。最初はパトワに興味を持った。学校で習った英語と異なるルールで使われている英語のような言葉、その言葉で表現される世界があることを知った。「スタンダードでない英語も素晴らしい」という感想を持った。

2005年、初めてジャマイカのボボ・ヒルに修士課程の学生として一人で調査に入った。「あまり実態について書かれてこなかった、経済活動についての調査の成果を修士論文にしました」。神本先生の姿勢は「こうじゃなきゃダメというのが嫌い。正しいと正しくないとあるなら、いつも正しくないとされる側に立って考えたい」のだそうだ。その先に「社会の寛容性と包摂性を高める」。可能性を見たいのだという。わかりやすく言えば文化や習慣に優劣をつけるような見方を減らしたいということ。そして、学生諸君には「百聞は一見に如かず。簡単に分かった気にならずに、実際に体を動かして、五感を働かせて世界とむきあう時間を作ってください」と呼び掛けている。感銘を受けたジャマイカンをあげるとしたら「ルイーズ・ベネット。独立を果たしていく中で、忘れ去られそうになっていたジャマイカの物語や歌を収集した人物。自分たちの足元にある文化のもつ価値について考えてみる事の大切さを学びました」という。

10年あまり研究者として島に入る中で受けた大きな衝撃は「初めて島に入った頃は、なかなかラスタ・コミューンでの撮影は認められなかったのが、Face BookやTwitter, InstagramなどのSNSの発展で、彼ら自身がどんどん画像や動画を介して、人々と世界との結びつき方がダイナミックに変わっていったこと」だという。

久留米大学では人気の先生。学生の山口美由紀さんに聞いた。「先生は、相談から何気ない会話まで学生たちとフラットな姿勢で心よく接して下さいます。このお人柄が学生の間では人気で、ジャマイカでの経験談も多く、特に私はレゲエの話を聞くようになってからレゲエが好きになりました。“先生対学生”の距離感を感じさせない事が魅力だと感じています」とのこと。また、ジャマイカでの研究に同行したこともある写真家の菱沼勇夫さんにも聞いてみた。「神本さんは、とても気さくにいきいきと現地の方と関わっていました。五感で感じることがいかに重要で、人を信頼することの大切さを教えていただきました」という。

夢は「パトワを使って自分が歌った曲のレコーディングをしたいですね」。神本先生は過去に、学生たちと一緒にプロの手を借りて、ckgz(チクゴズ)名義で筑後をテーマにして楽曲を制作しCDとしてリリースした経験がある。その楽曲のひとつ「チクゴノワ」を聴かせてもらった。楽しい、レゲエのリズムにのって地元感あふれている。築後弁で「♪男はバリカタ、女はほめとく・・・どげなこつしよっと?♪」。意味がよく分からなくても踊りだしたくなり、一気に筑後が近くなった。柔軟性のある若き研究者のこれからの活動にもエールを送りたい。

コンタクト先と代表的著書

コンタクト先:
839-8502福岡県久留米市御井町1635
久留米大学文学部
https://sjkam.jimdo.com

代表的著書の紹介:
「ラウンド・アバウトフィールドワークという交差点」神本秀爾・岡本圭史、集合社 2019 /1
「レゲエという実践、ラスタファーライの文化人類学」神本秀爾、京都大学学術出版舎」2017/3
2005年から2013年の調査での成果にもとづくもの。ラスタについて日本語での言及した著書としては最初。


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