方言をレゲエのリズムにのせて学校をまわるオンリーワンのカルチャー・アーティスト


写真:福井県出身のシンガーソングライター、シングJ. ロイさんの作品

 90年代より、地元福井を拠点に音楽活動を始めた。2005年に「NO  MORE  WAR」という楽曲のリリースから全国のレゲエファンから注目され、全国ツアーが始まった。

いつか福井弁の歌を作ろうと思っていた矢先に、2008年FM福井の主催で「ホームタウン・ソングコンテストに参加しませんか」とお声がかかった。【ほやほや】という歌を作ると県内から幅広い支持をうけて、福井県知事から「福井ブランド大使」に任命された。

「福井県の人って、シャイで方言をしゃべるのは恥ずかしいんですね。だけど、レゲエのリズムにのせると、みんな歌うんですよ」とロイさん。09年にリリースされた【だんね~ざ.福井弁の唄】では着うたサイトの総合ジャンルランキングで1ヶ月1位になった。ちなみに「ほやほや」は、”そうだそうだ”で「だんね~ざ」は、”問題ない”という意味なのだそうだ。「方言の意味がわからない歌ほど耳にひっかかる。地元の大人や子どもたちも、案外、方言を知らずにいる」という事がわかり、各地でレゲエのリズムにのせて地方から歌を発信し続けた。福井県だけでなく66校の小中高をまわりさらに京都精華大学、久留米大学などからも依頼をうけた。国立大分大学では、特別講師として日本で唯一のレゲエを活用した授業をした。14年には長崎市の中学校、沖縄宮古島市の小学校などで生徒たちと一緒に歌を作った。このように、レゲエをベースにして、ロイさんの活動はどんどん広がっていった。

例えば、長崎市立香暁小学校での愛唱歌プロジェクトは、50人の子どもたちが音楽室に集まり、ロイさんの呼びかけで“香暁のよいところ”を言葉にだしてもらい、それを次つぎと黒板に書きとめながら、メロディにのせ、詩と曲を組みあわせてできあがり。授業が終わって、教室を出る時には、みんな口ずさんでいたという。学校の先生たちも「普通の授業ではない、びっくりするくらい子どもたちの笑顔がはじけている」とロイさんの授業の反応に感謝していたそうだ。

2 0 1 5年には福島県の浪江小学校でも歌を作ったことが福島新聞紙上でとりあげられ、NHKでも番組として紹介もされた。

そんなロイさんの活動を知った、当時国立民族学博物館外来研究員の神本秀爾先生(VOL22)がロイさんに注目し『地方で根付くダンスホールレゲエーまちづくりに向けて制作された【ワカサノタカラ】の事例について』という論文を日本ポピュラー音楽会にて発表して話題となった。活動は自分で売り込みなどしない。“いつも依頼がまいおりてくる”のだそうだ。福井県から始まって、沖縄、長崎、福島、京都、久留米、富山、大分、滋賀、神川県と続く。地元では、CMソングなども作詞、作曲してTVで流れている。ロイさんには熱烈なファンが各地にいる。メルボルン在住の女性は、ロイさんの写真を見て色彩豊かな水彩画にしてロイさんのFB(www.facebook.SINGJROY)を飾っている。ロイさんは、写真で見るより、数倍温和でやさしく声質も暖かく、方言の歌を熱く語り続ける。子どもたちや地域の人たちをひきつける魅力がここにあった。

ロイさんは、幼少の頃、父親からラジカセを買ってもらい流れてくるマイケル・ジャクソンなどの黒人音楽、リズムに魅かれた。それは、「ブラックパワーのプライドとパワーは強く、おまえは、ちゃんと生きているのか!」と思い知らされることにもつながった。母親は高校の和裁の先生だった。「学校の先生に怒られない程度のヤンチャだった」、けれど「中途半端な気持ちで高校に行くなら、行かなくていい」と母親に言われてとロイさんは、昼間働いて、自分の生活費を稼ぎながら定時制の高校に通学したそうだ。

20才の時、友人と二人で初めてジャマイカに行ったが、周囲は全部ジャマイカンばかりで正直怖かったという。その後、歌手のパパユージさんのバンドと一緒に行って、1ヶ月滞在したときは、完全に見方が変わったのだそうだ。ゲットーに住むみんなのやさしさも知った。「僕は先輩たちや周囲の人に恵まれているんです。18年4月にはロスのレーベル“Ari Prado Music”からシングル曲、【DEAM COME TRUE】をリリース。ロスで初のライブを大成功させた。その時も渡航費がないな~と悩んでいたらCMソングの依頼があったりして」

養護学校や老人ホームでもレゲエにのせて福井弁の唄を歌っている。車椅子の人たちは、リズムにのせて体を左右に動かし、老人ホームのおばあちゃんたちは、福井弁の歌を聞いて涙しているという。

今年、3月にはロスでレコーディングをして帰国。5月には【Sing J.Roy 30th Anniversary EP California】が発売になる。

近い将来はロスで活動してみたいと言う夢がある。「日本人学校が多い地で、日本の歌を作りたいですね。家族みんなで移住するのもありかなあ」。

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Email:singjroy@gmail.com


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