東京芸術大学出身のガラス造形作家


Ms.Lee-Ann Haslam リーアン・ハスラムさんの作品

――”Life is not one way. “
「ガラスで和傘を作るのがひとつの目標だった。人生は一つの方向だけではないのよ。この形、この色じゃないとダメなんてないの」。え?どういう事?雨の日にさす和傘?ガラスだと雨音がきれいに響くわけ?筆者の硬い頭で想像をめぐらしてみたがリーアンさんの和傘の像がうまく結べない。写真があった。重さ225kg、直径180cm。柄の部分は竹でなくスチィールとのこと。「日本の伝統芸術に感動して何度も何度も京都に通ったわ」。そのガラス製の和傘は、お茶席に使われる感じの大きなものだった。野点に使われる大きな傘だとしたら、赤というイメージしかなかった筆者だったので、制作過程を聞いた。

「自分なりの和傘の発想は、芸大に通う以前だったと思うけど、いつ頃だったかはっきりしないわ。まず、伝統的な和傘について調べてみたの。どんな材料でどのように作られているかなど。それから自分はどう作ればいいのかをいろいろ考えてみたの。ミニチュアの模型など作らなかったけど、木で作ってみて、それからガラスに移行したわ。凄く、難しかった点は、傘の頭部の骨組みにガラスをはめること。もしも、野点で使っていただけるならとっても光栄だけど、、、モダーンな飾り物の一作品としてでもいいし」

父はイギリスとジャマイカの混血で、母はジャマイカ人。祖父がレバノン系。彼女はジャマイカ、キングストンで生まれた。
日本に来る前、アートだけでなくいろんな勉強し続けていた。1997年、メキシコのInstituto Technologico De SonoraでAFSの交換留学生としてスタジオアート、スペイン語そしてコンピューターサイエンスを学んだ。その後、フロリダインターナショナル大学で国際関係と語学コースで単位を取得した後NYのフォーダム大学でアートの歴史、グラフィックデザイン、経営、経済の基礎を学び卒業。キングストンに戻って2003年にUniversity of TechnologyのCentre of artsで文化コーディネーターの副部長をした。そこでJETプロラムの申請を友人に強く薦められた。異文化に興味を持っていたリ―アンさんが自分の事を言う「世界市民」はすぐにそれに応じた。

JETプログラムに受かって佐賀県の高校に英語補助教員として着任したのは、14年前。日本語もろくに話せなかったけれど、辞書を片手に友人はすぐできた。

「茶道,華道、三味線、弓道などをやってみた」。その時代はとにかく日本の伝統芸術にのめりこんだそうだ。「体験して学び、思考しながら動作を学んでいく」のくりかえしだった。裸足で矢を弾く弓道は難しくなかったけれど、茶道の正座には、耐えられなかったそうだ。

ガラスへの興味はNY時代にさかのぼる。フォーダム大学の生活はキャンバスを買うお金もままならなかったので、どこにでもある窓にまず目をつけた。「日本にはない窓の形、ガラスがはまった上下にできる窓。表と裏にストーリー製のある絵を描いたの。光を通すので、表裏で影響しあった作品になり、それを卒論にしたわ」。それが元となって芸大の奨学金を得て、ガラス造形科の藤原信幸教授の研究室で学んだ。材料の仕入れ、セラミックス、ステンドグラス、彫刻、メタルなどの使い方とガラス造形などに関する一通りをそこで学ぶことができた。

今、興味をもっている物。「自然と融合すること。不完全なものは完全!」。砂浜に落ちていた青いガラスのかけらを熱して柔らかくして壊し、そこから何かメッセージを伝えることを探す。例えば、砂浜から拾ったガラスのかけらをハートの形をした置物に変えた。そこからシンメトリーでない美がうまれたのだそうだ。廃材、拾った物から創造していく事は面白い。これからも色んな“拾い物”で作品がどんどん生まれてきそうだ。

世田谷区の私立K女子中高校で英語による「美術」を教えている。木曜日、始業と同時にお昼をまたいでいくつものクラスで女子生徒とのべ140人と対話しながら。「教えるというより、やりたい事をやらせる。トライさせて、考えさせ、自信をつけさせる。だから一人一人のやる姿勢を励ましている」。疲れるけれど、生徒から学ぶことも多いと楽しそうだった。「アートはイマジネーションの言葉。Life is not one way.人生は一つの方向ではないんだから」とリーアンさんは何度も繰り返した。

創作活動、教師、作品を依頼してきた大手会社の経営陣との会議など。エネルギー全開の彼女はひとなつっこい。笑顔を絶やさず、ガラスア-トの世界について時間を忘れるほど語り続けた。2002年頃から本格的に作品を作り、記録に残しているだけでも300はくだらないそうだ。ガラスの壁掛け、タンブラー、ダンスをしているカラフルな人々のお皿・・・。中でも常陸宮華子様がお買い上げくださったタンブラーは、今でも記憶に残っている一つ。2019年3月に開催されたWorld of Art Tokyo 展では、厳しい審査を経てジャマイカ人として初めて出展できた。
「もっと多くの人々に自分の作品を見てもらいたい。そのうち銀座で個展したいな~」。

コンタクト

6月29日ワークショップを開催する
開催場所:http://www.thepinkcow.com/
イベント詳細:https://www.facebook.com/events/449894789156607/
コンタクト先:Leecreates@yahoo.com
https://www.facebook.com/LeeCreatesPage/


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